【1. 身体的要因】
身体の活動や健康維持を通じて脳機能に良い影響を与えるものです。
- レギュラーな有酸素運動と筋力トレーニング
中国の高齢者縦断研究や多国籍アジア人対象メタ解析では、週150分程度の中強度有酸素運動にレジスタンス（筋力を高めるために筋肉に抵抗をかける運動）を組み合わせることで前頭葉血流と実行機能が向上し、軽度認知障害（MCI）への進展率が低下しました。 - 質の高い睡眠と安定した概日リズム
中国系高齢者の大規模追跡では、慢性的な短時間睡眠（≤5 h）と過長睡眠（≥9 h）の両方が認知的脆弱性を増大させ、睡眠時間の年次増加がさらなる機能低下と関連しました。 - 高血圧など心血管リスクの積極的管理
中国農村部の無作為化試験を含むアジアデータでは、収縮期血圧を集中的に管理した群で7年後のMCI・認知症リスクが約15 %減少し、脳血管性病変による機能低下が抑制されました。
【2. 栄養・食事要因】
食品や栄養素による脳機能への影響を扱います。
- ポリフェノールを多く含む伝統的食材（緑茶・ウコンなど）
日本と中国の前向きコホートで緑茶（1日2〜3杯）が白質病変や認知症発症リスクを減少させ、インドを中心とするRCTメタ解析ではクルクミン0.8 g/日を24週間以上継続すると全般的認知機能スコアが有意に上昇しました。 - 発酵食品・プロバイオティクスによる腸脳相関の調整
韓国や中国の多施設RCTで、Bifidobacterium longum BB68Sなどを含むプロバイオティクスを12〜24週間摂取すると、脳由来神経栄養因子（BDNF）が上昇し、注意柔軟性と気分が改善しました。
【3. 精神的・認知的活動】
心の落ち着きや注意力、思考能力を高めるアプローチです。
- バイリンガリズムと生涯学習
インド・シンガポール混成サンプルの研究では、二言語使用歴が長い高齢者で認知予備能が高く、タッチパッド式二言語トレーニングによって実行機能の維持が確認されています。 - マインドフルネス瞑想・ヨガ・太極拳などの東洋系マインドボディ法
インド・中国・韓国のRCTやアジア由来メタ解析では、8〜12週間の瞑想プログラムや太極拳が前頭前野皮質厚の維持と学習記憶の改善に寄与し、MCI患者の全般認知機能をウォーキングより大きく高めることが示されています。
【4. 社会的要因】
他者との関わりや社会参加が脳を刺激することに関係します。
- 社会参加・デジタル交流の維持
中国・シンガポールを含む縦断コホートで、友人関係の縮小やオンライン孤立が情報処理速度と記憶低下を予測しました。地域活動やボランティア、オンライン学習への参加は脳刺激となり、認知低下率を有意に抑制しています。