排尿の勢いが弱く途中で途切れる、あるいは出始めまで時間がかかる現象を尿切れと呼びます。これは下部尿路症状のうち排出障害に分類されます。男性では前立腺肥大による尿道圧迫が原因となることが多く、女性では骨盤底機能障害や機能的閉塞が関与する場合があります。
まとめ
- 尿切れは前立腺肥大、排尿筋収縮低下、尿道閉塞、機能的障害などが主因である
- 診断は問診、身体診察、尿流測定、残尿量評価を基本とし、必要に応じて内視鏡や圧流量検査を行う
- 治療は生活改善と行動療法を土台に、薬物治療や手術を段階的に選ぶ。これらはいずれも国際ガイドラインと近年の研究で支持されている
主な原因
- 前立腺肥大 中高年男性で頻度が高く、前立腺組織の増生が尿道を狭くして最大尿流率を低下させます。診療は国際的にアルゴリズム化されています
- 膀胱排尿筋の収縮低下 いわゆるアンダーアクティブ膀胱で、高齢者に多く、男女ともに起こります。近年は非侵襲的評価法の検討や有病率の整理が進んでいます
- 尿道狭窄や機械的閉塞 手術歴や外傷、結石、腫瘍などによる物理的障害が原因となります。女性でも機能的あるいは解剖学的閉塞があり得ます
- 神経因性要素や薬剤 糖尿病による神経障害や抗コリン薬、交感神経作動薬などが排尿筋収縮を阻害します
- 併存症と生活要因 便秘、睡眠時無呼吸、代謝異常などは下部尿路症状を悪化させることがあり、系統的評価が重要です
受診が必要な症状と診断の流れ
肉眼的血尿、発熱、腰背部痛、突然の尿閉、反復する尿路感染、体重減少は器質的疾患の可能性があるため、速やかな泌尿器科受診が推奨されます。
- 問診とスコア評価 国際前立腺症状スコアで重症度と生活への影響を評価します
- 身体診察と直腸診 男性では前立腺の大きさ、硬さ、圧痛を確認します
- 尿検査、血液検査、残尿測定、尿流測定 感染や血尿、腎機能障害を除外し、最大尿流率と残尿量を評価します
- 画像検査や内視鏡、圧流量検査 合併症や手術適応を検討する段階で実施します
生活対策と行動療法
- 水分摂取の調整 極端な脱水を避け、就寝前の多量摂取は控える
- 便秘予防と体重管理 骨盤底への負荷や排尿障害の悪化を防ぐ
- 骨盤底筋トレーニング 男女とも排尿コントロール改善に有効
- 刺激物の見直しと段階的膀胱訓練 カフェイン、アルコール、辛味を減らし排尿間隔を延長する
若いうちからの予防と進行抑制
- 運動習慣の確立 有酸素とレジスタンス運動で代謝改善と骨盤底機能維持を図る
- 骨盤底筋トレーニングの早期導入 予防的介入としても有効
- 生活習慣病管理 糖尿病、脂質異常、睡眠時無呼吸の是正が神経膀胱機能悪化を防ぐ