・NK細胞療法そのものは、基礎研究や初期段階の臨床研究では期待されている分野です。しかし、現時点では「人間への治療法として確立されている」とは言えません。
・先進的な研究では、NK細胞の活性を高めるために、遺伝子改変や薬剤処理、寿命延長処理などが行われています。今後はこうした強化型NK細胞療法が主流となる可能性があります。
・制度面では、現在NK細胞療法は「再生医療等の計画」として国に届け出れば実施できる仕組みになっていますが、計画内容の実効性や安全性については厳格な審査が行われていないのが実情です。
・再生医療等委員会による審査があるとはいえ、がん専門家がいないケースもあり、「科学的妥当性の確認」が十分ではないとの批判があります。
・また、患者が「国が認めた治療だ」と誤認しやすい制度設計にも課題があります。届け出をしただけであって、効果があると国が保証しているわけではないのです。
・今後は制度改革とともに、患者に対して正確な情報提供ができる体制の強化が求められます。特に、がん専門相談支援センターなど第三者的な情報提供の場を活用することが重要です。
・情報の洪水の中で、患者が自分で正しい医療情報を選ぶことは難しいため、信頼できる医師や専門医、またエビデンスに基づいた情報源を活用することが必要です。
・現時点で標準治療より優れた治療ではないこと、むしろ標準治療を受けることが最も重要であるという理解が第一歩です。
1. NK細胞療法のメリット
・NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は、体内に自然に存在する免疫細胞で、がん細胞やウイルス感染細胞を攻撃する働きを持っています。
・この療法では、患者本人の血液からNK細胞を取り出し、体外で培養・増殖させたうえで再び体内に戻します。
・他人の細胞ではなく、自分自身の細胞を使用するため、拒絶反応のリスクが低いという特徴があります。
・副作用の報告は少なく、「比較的安全な治療法」というイメージが先行している面があります。
・がん治療に加えて、「がんの予防目的」にも使える可能性があるとされ、一部のクリニックでは予防医療としてPRされています。
・美容医療の一環としても取り入れられているケースがあり、「免疫力を高める」「アンチエイジング効果が期待できる」といった訴求も見られます(※ただし、これらの効果は科学的に証明されていません)。
2. NK細胞療法のデメリット
・最大の課題は、「科学的エビデンスが不十分」であることです。標準治療(保険適用の治療法)とは違い、有効性や安全性を裏付ける大規模な臨床試験は行われていません。
・がんがすでに体内に発生している場合、がん細胞はNK細胞による攻撃を回避する能力を獲得していることが多く、「NK細胞を増やせば治る」という単純な話ではないと専門家は指摘しています。
・大学病院やがんセンターなどの多くでは、かつてNK細胞療法を研究対象としていましたが、明確な効果が得られなかったため、現在はほとんど行われていません。
・この療法は自由診療に分類され、健康保険が使えないため「1クールあたり数十万〜数百万円」と非常に高額です。
・「治ります」「効果があります」といったクリニック側の広告表現が過剰であるケースもあり、科学的根拠のない誇大広告・虚偽広告のリスクが問題視されています。
・治療過程での細菌混入(感染リスク)や、NK細胞の寿命の短さ、活性の低下など、技術的な課題も多く残されています。