「血管年齢が実年齢より若いです」と言われたら、嬉しいですよね。逆に「血管年齢が高めですね」と聞くと、ちょっと不安にもなると思います。
ですが、「血管年齢」という言葉は実は医学的にいくつかの異なる意味があるのをご存知でしょうか?
この記事では、血管年齢とは何か・どうやって調べるか・若返らせる方法までを調べました。
血管年齢という言葉は魅力的ですが、何を指しているのかが重要です。
検査を受けることで、自分のリスクを客観的に把握でき、生活改善や治療のきっかけにもなります。
そしてなにより、“若返り”には近道がありません。運動・食事・生活習慣の見直しが何よりの武器になります。
気になる方は、まずは血液検査や血圧チェックから。ご自身の状態を正しく知ることが、健康への第一歩です。
1.
そもそも「血管年齢」とは?代表的な3つのタイプ
「血管年齢」という言葉は医療の現場や健診などで使われますが、実際は決まった定義があるわけではありません。大きく分けて、以下の3つの系統があります。
1.
リスク計算型(心臓年齢・血管年齢)
高血圧、コレステロール、糖尿病、喫煙などのデータをもとに「将来の心筋梗塞・脳卒中のリスク」を推定し、それに対応する年齢として示すものです。
たとえば「あなたのリスクは60歳男性と同じです」と言われたら、実年齢が40歳でも“血管年齢は60歳”というふうに伝えます。
これは主に生活改善の動機づけに使われます。
2.
血管の硬さを測るタイプ(動脈スティフネス)
血管のしなやかさを表す「PWV(脈波伝播速度)」などで、実際の血管の機能を測定します。しなやかな血管は血流をスムーズに保ちますが、動脈硬化が進むと硬くなり、心臓や脳への負担が増します。
日本でも「CAVI」や「baPWV」などが健診で使われており、これが“血管年齢”と呼ばれることが多いです。
3.
血管の中の状態を見るタイプ(画像診断)
CT検査などで心臓の血管に“石灰化(カルシウム沈着)”がどれくらいあるかを調べる「冠動脈カルシウムスコア(CAC)」や、首の血管の壁の厚み(頸動脈IMT)を測る超音波検査などがこれにあたります。
実際の動脈硬化の“痕跡”を確認する方法です。
2.
血管年齢はどうやって調べるの?
どの“血管年齢”を調べたいかによって、検査の方法は変わります。
1.
まずは血液検査と血圧測定
これはすべての基本。高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙歴などの情報から、心血管リスクを評価します。これにより「心臓年齢」が分かります。
2.
より詳しく知りたいときは、以下の検査が選択肢
- 「PWV(baPWV、cfPWV)」
血管の硬さ。腕や足にセンサーをつけて測定。 - 「CAVI」
血圧の影響を受けにくい血管の硬さ指標。比較的正確。 - 「CACスコア」
心臓の血管の石灰化を見るCT検査。被ばくはありますが信頼性が高い。
どの検査を受けるかは、年齢、リスク、症状の有無などによって医師と相談して決めましょう。
3.
それぞれの指標はどんな意味があるの?
少し専門的になりますが、ここも大事なポイントです。
1.
PWV(脈波伝播速度)
cfPWVという方法では「10 m/s」を超えると、心血管病のリスクが高いとされています。日本ではbaPWVやCAVIの方が身近かもしれません。
2.
CACスコア(冠動脈石灰化)
スコアが高いほど心筋梗塞のリスクが高く、アメリカのガイドラインでは治療の判断材料に使われることもあります。
0ならリスクは非常に低い、100を超えると注意が必要です。
3.
頸動脈IMTやFMD
これらは血管の壁の厚みや内皮機能を評価しますが、日常診療では補助的な意味合いです。測定者の技術差もあるため、万人向けではありません。
4.
血管年齢に関する誤解と注意点
誤解されやすいポイントも整理しておきましょう。
1.
「血管年齢」は1つではない
手法によって違う“年齢”が出ることがあります。どの方法で出したかを理解するのが大事です。
2.
「若いから安心」ではない
たとえばCACスコアが0でも、喫煙や糖尿病があればリスクは高いままです。総合的な判断が必要です。
3.
“若返り”を狙うなら、数値ではなく中身を見る
数字に一喜一憂するよりも、自分の生活習慣を見直すきっかけにするのが本質です。
5.
血管を若く保つには?科学的に効果がある方法
血管はある程度“若返らせる”ことができます。
1.
有酸素運動
ウォーキングやジョギングなどを週に150分以上行うと、PWV(血管の硬さ)が改善するという研究結果があります。
2.
体重管理(減量)
特に肥満の方は、体重の5~10%を減らすだけで血管機能が改善します。
3.
食事(地中海食パターン)
野菜、果物、魚、オリーブオイル中心の食事で、内皮機能(FMD)が改善すると複数の研究で示されています。
4.
禁煙・睡眠・ストレスケアも重要
血管に悪影響を与える生活習慣はすべて、将来のリスクにつながります。
5.
薬物治療(必要に応じて)
高血圧やコレステロール、糖尿病がある場合は、スタチンやSGLT2阻害薬など科学的に血管の機能改善が確認されている薬があります。医師とよく相談しましょう。